第9章 *File.9*
「その間に、他の人を好きになったりとかはなかったんですか?」
「ないない。あの頃は私も新米刑事で毎日がいっぱいいっぱいだったし、彼以上の男なんて、早々いないっての!」
「「「確かに」」」
三人揃って、納得して頷いた。
ゼロと並べるほどのイイ男は、景光と高兄しか認めないから!
それに…。
私自身が譲れないから。
この身に何があったとしても降谷零、彼の存在だけは、誰にも。
「三年も会えなかったのは、探偵業の事情で、ですか?」
「そんな感じ」
ハッキリとYESとは言えない。
私って、実は正直者だわ。
「探偵業って、プライベートでも大変なのねえ」
「今は落ち着いてる、かな?」
「昨日、ポアロに行ったら、安室さんいなかったわよ」
「高木とー?」
「それは置いといて!」
「でしょうねえ。かれこれ五日逢ってないもん」
「「「五日?!」」」
「アンタ達、よく上手くハモれるわね」
「っていうか、その間の連絡とかは?」
「一回来た」
「一回だけっ?」
「それでいいの?」
「彼女とは言え、仕事の邪魔はしたくないからね。万が一があった時は、仲間が連絡くれるだろうから」
風見か、景光から。
「信頼してるのか、呑気なのか」
「こう見えても、ちょー心配してるわよ」
お互いに、日々生命懸けの仕事をしてるから。
毎日無事に家に帰って来て。
ただ、それだけを祈ってる。
「ねえ、雪乃さん」
「なーに?」
「前々から思ってたんだけど、私達にまだ何か隠してない?」
「なんで?」
全くアンタって人は、変に鋭いのね。
長年の刑事の経験値と、父親の血、かしら?
「何となく?」
「美和子の気のせいよ」
ニッコリ笑っては見せたけど、美和子は納得してないみたい。
「「??」」
三池と由美は、顔を見合わせて首を傾げてる。
多分近いうちに、分かるから。
それまではウソついて隠し通すけど、ごめんね。
「お待たせしましたー!」
微妙に気まずい空気が流れたトコで、店員の明るい声と共に注文した品が続々とテーブルに並べられたから、ホッとため息を洩らした。
もちろん心の中で、ね。