第8章 *File.8*(R18)
「!」
ヤベッ!
口に出しちゃったわ。
ってか、仕事中だから、一人称は「僕」なんだ。
風見だけしかいないから口調は普段と変わらないけど、新鮮だわ。
「それはお二人共、かと。実年齢より若く見えますから」
「褒められ、た?」
「そういうことにしといてやる」
「……」
意外と気にしてる、のかしら?
「髭は伸ばさないぞ」
「それは私がイヤ」
どうやら私の視線の位置で、何を想像したのか気付いたらしい。
「!」
スッと顔を背けた、風見の肩が揺れている。
とか言う、私も笑いを堪えてるけど。
だって、瞬時に想像しちゃったから。
ちょっと前の景光みたいに、髭を伸ばしたゼロの顔。
「今のままがいい」
「笑いながら言われると、説得力に欠ける」
「ごめんってば」
右手に拳銃を持ったままなのを、忘れそう。
「後で覚えとけよ」
「もう忘れた!」
耳元で囁かれたから、大きな声で返事をした。
「風見」
「は、はい!」
キョドりすぎだし、どんだけ部下を制圧してるの。
でも待てよ?
よーく考えなくてもゼロは何でも出来る、完璧主義のちょー無敵な上司?
マジ怖すぎる!
私にはムリだ。
何があっても警察庁には、公安だけには絶対行かない!!
「構えろ」
「はい」
二人仲良く訓練を始めたから、私もしばらく射撃訓練に集中した。
「う〜ん」
やっぱりブレが大きいなー。
拳銃を発砲した時、身体に受ける衝撃はかなり強い。
女なら、尚更だ。
「片手?」
「万が一に備えて」
「そういう万が一はないに越したことはないが、狙う的の中心をずらせばいい。今は的の中央を狙ったんだろ?」
「うん」
「上にズレるなら、狙う的の位置をそのまま下げてみるといい。的中率はいいからな」
「うん」
ホント、色んな意味で頼りになる上司ですね。
風見、ファイトだ!