第7章 *File.7*
「それは全くないから、心配ご無用。逆にゼロに雪乃は勿体ないと思うよ」
「……」
「…景光」
何故か自信満々の景光に、私は言葉を失った。
「景光」
雪乃は景光の前まで歩くと、そのままギュッと抱き締めた。
「雪乃?」
「「!」」
思いにも寄らぬ雪乃の行動に、男三人が目を見張る。
「今までずっと傍で見守ってくれて、有難う」
「…ああ」
「これからも、宜しくね」
今にも泣きそうな表情からの、満面の笑み。
我が妹なから、これはとんでもない悪女かもしれない。雪乃の場合、きっとこれは無意識の素面だろうから、尚更タチが悪い。
「こちらこそ」
勿論、何の躊躇いもなく、景光も笑顔で雪乃を抱き締め返した。
「「……」」
仲の良すぎる、ある意味、今現在恋人同士に見えなくもない弟妹の様子に、降谷君はと言うと、かなりの我慢を強いられてるらしい。
「覚悟しとけよ、ゼロ」
「それはこっちのセリフだ、景光」
雪乃を哀しませたら、景光が黙っていない。
景光が悔やむほど雪乃を幸せにしてみせると覚悟を決めた、降谷君。
勝敗は誰の手に?
とは言え、この勝負の判定を下すのは、雪乃しかいない。
それも判定期間は、その生涯ですからね。
「ヨシ!」
景光は満足気に頷いて、雪乃を降谷君に引き渡した。
「勝手に一人で自己完結するな」
「ゼロの本音は、こうでもしないと聞けないからね」
「ハア」
してやったり顔で雪乃にウインクする景光を見て、降谷君は盛大なため息を洩らした。