第7章 *File.7*
「何時から、と、お聞きしても?」
「高校一年から、と、お伝えした方がいいのかどうかは迷いますが」
「……」
降谷君の返答に、ポンと雪乃の頬が赤く染まった。
兄妹水入らずでごゆっくり。と、敢助君と上原さんが先にホテルへと戻った後。
主語がなくても正確な返答がくるのは、流石と言うべきか?
「雪乃、貴女は一体何歳なんですか?」
「そうは言われても…」
自分の恋愛の話になると、まるで十代の思春期の少女そのものの反応ぶり。
余りもの衝撃に、思わず額に手を当てた。
「可愛いよな」
「シスコンも大概にしろ、景光」
「それは兄さんもだろう?」
「!」
ニコニコ顔の景光にバッサリと突っ込まれ、珍しくギョッとした降谷君の視線がチラリとこちらに向いた後、気まずそうにそらされた。
「残念ながら、否定は致しかねます」
「……愛されてるな」
妬けるよ。と、困ったように笑う。
これがきっと嘘偽りの無い、降谷零の素顔なんだろう。
「…バカ」
雪乃は降谷君の洋服の袖を摘んで、赤い顔のまま俯いた。
「とりあえずは、色々と安心しました」
何が?と今訊ねられても、とても一言では答えられませんが。
たった数時間ではありますが、二人を見ていると色々と分かりました。昔から変わらない三人の関係や、降谷君と雪乃の恋愛事情など。
「生涯大切にします。雪乃にそう、約束をしましたから」
真正面から、真っ直ぐに私の目を見つめ返す。
降谷君と、彼に寄り添う雪乃の覚悟が痛いほどに伝わってくるのは、互いに警察官と言う職業に就いているからでしょう。
「雪乃を宜しくお願いします。それから今は亡き両親の代理として、有難うございます。と感謝の言葉も添えさせていただきます」
誰よりも雪乃を愛し護り幸せにすると決心をしてくれた、降谷君のその想いには感謝しかありません。
「有難うございます。これからも宜しくお願いいたします」
礼儀正しくきちんと腰を折る姿は、彼の年相応以上の誠実さを表している。
「兄さんは、雪乃には勿体ないとか思ってたりする?」
「ええ、まあ」
「「……」」
降谷君の表情が、お前は何処までシスコンなんだ。と言わんばかりに歪む。