第7章 *File.7*
カラン♪
と、何故か『臨時休業』と張り紙がしてあるポアロの扉を開けてくれて、最初にこの目に映ったのは、
「高兄ーっ?!」
だった。
「おかえり、雪乃」
「ホントに高兄だっ」
高明兄さんに直進して思いっきり抱き着くと、変わらない優しい声が頭上から聞こえた。
高兄もゆっくりと、抱き締め返してくれる。
高兄と会うのは一年ぶり?
「お前はいくつになっても変わんねえなー、雪乃。30になっても精神年齢三つだ、三つ!」
「あ、居たの?30は余計なの!」
「何だ、その差は!事実だろうがよ」
白い目で見上げたら、相変わらず髪が長く目付きとガラの悪い刑事が相変わらずの怖い顔で私を見下ろしていた。
その名は大和敢助。長野県警の警部で高兄の幼馴染。
「中々会えない実の兄と、赤の他人との差」
「可愛くねぇ!」
「可愛くなくて結構!敢助は煩い!」
「まあまあ、二人とも」
「由衣姉は何があっても何時だって、敢助の味方だからな〜」
「そっ、そんなことないわよ!」
「怪しい~」
「雪乃ちゃん!」
乙女のような赤い顔して言われても、説得力ないし?
こちらも長野県警の刑事で敢助と高兄の幼馴染でもある、上原由衣。
「雪乃は子供に戻ったみたいだな」
「景光も煩い」
「八つ当たりされた」
カウンターの向こうでゼロに報告しているそういう景光こそ、子供の告げ口と一緒じゃないの?
「まあまあ」
ゼロも苦笑いしながら、景光とケーキを作っているようだった。
「完治しましたか?」
「うん。すっかり!」
抱き締めた腕はそのままに、高兄と視線を合わせる。
「しっかり完治するまで、退院の許可が下りなかったんだってな?」
「誰よ?バラしたの」
「さぁな」
「敢助嫌い!」
「嫌い嫌いも好きなうちってか?」
「100%、それはないっ!」
ニヤニヤ笑う敢助を睨む。
「入院沙汰はもう何度目ですか?お転婆娘もほどほどに。全く心臓がいくつあっても足りませんよ」
「くっ、クックック」
高兄のセリフに、ゼロが吹き出して笑った。