第7章 *File.7*
「……」
あれ?
こんな予定だったっけ?
みんな仕事だから、誰にも言わなかったんだけどな。
家に帰って落ち着いてから、退院の報告をしようと思ってたのに。
「では、帰りましょうか?」
「う、うん。有難うございました」
視線で催促されたので、最低限に減らした荷物をゼロに渡すと、二人にペコリと頭を下げた。
「おかえり」
「…ただいま」
「何か不服でも?」
「とんでもない。ただ、零は零だな、と」
久々に乗るRX-7の乗り心地は何も変わらず、シートベルトを閉めるとホッとしてシートに凭れた。
私の退院の日程を、一体誰から聞き出したのやら?
ホント、やることなすことに抜かりも隙もない。
「褒めてるのか?」
「そのつもりデス」
「誰にも連絡しないで、一体どうやって帰るつもりだったんだ?」
「どうやって。って、普通にバスで」
すれ違った警察病院経由のバスを、窓越しに指さした。
私のハロは、私が借りてるアパートの駐車場に停めてあるはず。
「だから荷物がこれだけ、と」
斜め後ろの後部座席へ、チラリと視線を移す。
「ハイ」
「どうして、こういう時にまで気を使うんだ」
きっと、退院の日程を私から言ってくれるのをギリギリまで待ってんだろうな。
「子供じゃないんだから、一人で家まで帰れるよ」
「そういう意味じゃない」
「……ゴメン」
「謝って欲しいワケでもない。ただ、淋しいだけだ」
ハンドルを握って前を向いたまま、ため息混じりに呟く。
「だから、ゴメン」
「…鈍いんだか、鋭いんだか」
今度は肩を竦めながらの呆れた顔になったから、少しホッした。
「ん?ポアロ?」
「一緒に昼食を、と思ってね」
「ありがと。でも自由っていいね~。屋上だけじゃ、全然満足出来ない」
「お疲れさま、だな」
駐車場を出てからポアロまでの道でさえ、新鮮に感じて仕方ない。
天気もいいし、とにかく外の解放的なこの空気は最高!
今回の入院の日数は過去最大だったから、入院した頃と季節さえ変わり始めた。
ポンと髪を撫でられ、笑顔を返した。