第7章 *File.7*
「長い間、お世話になりました」
「お転婆娘もほどほどに」
「そういうこと言います?」
「医者だから、言えるんだよ」
「……」
腹部の銃創がしっかり完治した、退院の日。
警察病院の出入口まで丁寧に見送ってくれたのは、今ではすっかり顔馴染になってしまった、まだ歳若い外科医。
「「痛みが完全になくなるまで、絶対に退院するな!」」
と、上司や同僚達から口を揃えてきつく言われ、本当に完治するまで病院から出してもらえなかったのは、きっと目の前にいる外科医と同じ理由なんだろう。
この歳で問題児扱いされても、全然嬉しくない!
「私、これでも刑事やってるんですけど」
「よく知ってる」
「くすくす」
自分を指させば、外科医の隣で看護師が楽しそうに笑ってる。
「……」
「君が助けた刑事さんは無傷。本来は褒めるべきことなんだろうけど、君の場合はまた直ぐに無茶をしでかしそうで怖いよ」
「ホント、よく助かりましたよね」
「それは…」
きっと陣平と萩、班長が守ってくれたから。
「心当たりが?」
「あります。この手で守ることが出来なかった、大切な仲間がいるんです」
唇を噛み締めて、右の掌をぎゅっと握り締めた。
ずっと、ずっとみんなで一緒にいたかったのに。
冗談を言って笑い合う、楽しかった時間は今でもこんなにもハッキリと覚えているのに…。
「また、怪我をしますよ」
「!」
不意に背後から現れて、握り締めた私の掌を大きな掌でそっと包み込んでくれた人がいた。
ハッとして振り返れば、外科医に一礼するゼロがいる。
「お迎えが来た、ようだね」
外科医は驚いた顔で、ゼロを見つめた。
そのハズだ。
だって、今まで警視庁捜査一課の仲間以外が迎えに来てくれた。なんてことは一度もない。
過去に入院だ、退院だって、ゼロや景光に一度も連絡したことはないけど、あの二人のことだから風見を通して、全部筒抜けだったに違いない。
「……」
私に優しい眼差しを向けるゼロには、きっと私の今の気持ちはダダ漏れだ。
「あらまあ」
確かにゼロは普通に超イケメンだけど、そこで頬を赤くして感心した顔しなくていいからね、看護師さん。