第7章 *File.7*
「ハア」
拳銃で撃たれた傷口は随分と塞がり痛みも落ち着いて来たけど、まさか自分の身体にこんな傷が出来るとは思いにもよらなかった。のが、正直な話。
全くを持ってかなーり余計なお世話ですが、私は嫁入り前の娘だから!と、なるべく傷口が目立たないように小さくと、医師達は一生懸命縫合をしてくれたらしい。もう30の女にそこまで気を使われてもなあ。と、思わなくもないんだけど。
勿論、美和子を無傷で助けられたことには、何の後悔もない。
ただ、撃たれた場所がもう少しズレていたら、本当に生命が危なかったんだと聞かされたのは、担当医に会って直ぐ。
ああ、彼らが守ってくれたんだと何故か確信出来たから、あの時は涙が溢れて止まらなかった。
「傷だらけの女で、ごめんね」
屋上の扉が開いた後、近付く一つの気配、足音。
「大切な人を守った名誉の負傷、だろ?」
「確かにそう、だけど…」
「その傷も含めて、お前の全ては俺の誇りだよ。雪乃」
屋上の柵に腕を預けていた私をまるごと包み込むように、零は背後からふわりと抱き締めた。
「…バカ」
「俺は雪乃を愛している。ただ、それだけだ」
「ふふっ」
傷があろうがなかろうが、私は私だ。ってこと?
耳元で優しく囁かれたセリフに、胸がキュンとなる。
時々、逢えなかった長い時間を取り戻すかのように、ひどく甘やかされる。
それは言葉だったり、眼差しだったり、キスだったり、それ以上の愛…だったり。
「私は…」
「ん?」
「零をちゃんと愛せてる?」
「それこそ愚問だな。出逢ったあの頃からずっと、雪乃の想いはちゃんと俺に届いてるよ」
「…そっか」
「少しは不安や淋しさが和らぎましたか?お姫様?」
「やっぱりバレバレでしたか、王子様」
「この小さな背中が全てを物語っていたよ」
「敵わないな、零には」
「俺も雪乃には負けてられないからな」
「一体…何を張り合うつもりなの?」
「まあ。色々と?」
クルリと方向転換させられた後、視線を合わせてクスッと笑い合う。
「零、有難う」
「…何が?」
「色々と、よ」
「!」
分かってるくせに知らないフリをして応えた、零の広い背中を抱き締める。