第7章 *File.7*
「僕ですが、何か?」
「「……」」
平然と言い放つゼロに、景光と視線を合わせてため息を一つ。
美和子が泣き止んだのはいいけど、ね。
「えーっ?!」
「驚きすぎ」
病室に高木の声が響き渡る。
「た、高木君!ココ病院!」
「す、すみません」
あー、平和でいいわ。
この二人。
「雪乃さん」
「はい」
改めて向き直り、真っ直ぐな視線を向けられた。
「助けていただいて、有難うございました」
「いいえ、どういたしまして。その言葉が聞けてよかった」
美和子の口から聞きたかったのは、謝罪の言葉じゃない。
感謝の言葉も笑顔なら、他に何も言うことはないから。
「雪乃さんのお兄さんと、安室さん」
「「はい」」
「大変申し訳ございませんでした」
「誰も君を責めたりはしないよ。君を助けられてよかった」
「君が元気に生きている。雪乃にとってそれが一番の治療薬ですから、ずっと忘れないで下さいね」
「有難うございます」
二人の穏やかな笑顔に、深々と下げた頭を上げた美和子はやっと安心したように肩を撫で下ろした。
高木も優しい目で美和子を見守っている。
「そうだ。トメさん達もみんな心配してましたよ」
「退院したら、また挨拶しに行かなきゃねー」
「…トメさん?」
「ウチの優秀な鑑識さん達」
「雪乃さんは、捜査一課のマドンナですから」
「貴方の美和子ほどではありません。ただ、職場の男性比率が異常に高いだけの話です!」
言葉に出していちいち説明しなくても、ウチの刑事課のことは十分に知ってるとは思うけど!
高木、余計なことを喋るな!
ゼロが怖いから!
「…くっ」
突然、景光が顔を逸らして肩を震わせた。
声を抑えながら、笑ってる!
「……」
この状況じゃ、景光!とも呼べないし、今更恥ずかしくて兄さんとも呼べないし!
景光には私の心境が、手に取るように伝わってるらしい。
「「??」」
傍で顔を見合わせて首を傾げてるのは、美和子と高木。
「……」
景光が吹き出して笑ってる理由を絶対に分かってるくせに、ゼロは我関せずで素知らぬ顔をしてるし!
何か色々腹立つんだけど!