第7章 *File.7*
「今日もいないのか?」
「誰が~?」
「望月雪乃さん」
狭い店内を、キョロキョロ見回す赤井の妹。
君はまだ会ったことがなかったのか。
「私もしばらく会ってないなあ」
「彼女、刑事なんでしょ?忙しいんじゃないの?」
園子さんの隣で蘭さんがう〜んと考え込んでいるから、あえて知らぬ顔をしてはおくが、
「私も…ひと月ぐらいお会いしてませんよ?ねえ、安室さん」
「そうですね」
やっぱりこうなるよな。
梓さんに笑顔で返す。
「私も会いたかったなー、安室さんの彼女に!」
あの日のことを、蘭さんが園子さんと赤井の妹に逐一話した、と。
「ははは」
「すっごく可愛いんだから」
「……」
本当のことだ。
否定はしない。
「まるで自分の姉貴みたいだな」
「それいいかも!」
赤井の妹が苦笑混じりに言えば、蘭さんは嬉しそうに笑う。
雪乃には、妹分やら弟分がたくさんいて大変だ。
でも雪乃なら、みんなまとめて喜んで受け入れるんだろうな。
「彼女の写真はないのか?」
「写真?」
そういえば、
「あることはありますね」
最近撮った、景光と二人での写真。
俺とのは、ない!
「見せて、見せて!」
「少しお待ち下さいね」
カウンターに戻ると、スマホの写真を開きコピーをしてから加工する。
念の為、景光はカットしておいた。
赤井の妹とは面識があるからな。
早く戻って来い。
この腕の中に、思いっきり抱き締めてやりたい。
写真の中の雪乃の笑顔を見ただけで、これだ。
俺も相当重症らしい。
「お待たせしました」
「「可愛~い!」」
「モデル、みたいだな」
スマホの画面を顔を寄せ合って写真を見た、第一声がコレか。
本人に告げれば、泣いて喜びそうだ。いや、顔を真っ赤にして思いっきり否定するか。
「会ってないのか?」
「いいえ、昨日もお会いしましたよ。どうしてですか?」
但し病室で、ね。
「写真を加工してる、アンタの顔」
「気の所為ですよ」
ココはさすが、と言うべきか。
油断ならないな。
「安室さん、この写真撮ったのって…?」
「僕、ですよ」
「隣に誰が写ってたのかは知らないけど、彼女、アンタのことがよっぽど好きなんだな」