第7章 *File.7*
「年から年中無茶ばっかりして、一体何やってんのよ、貴女は!!」
入院した数日後、勢い良く病室の扉が開くなり、怒鳴り込んで来たのは宮野志保だった。
「ごめんね、志保」
その声が怒りではなくて、本当は不安と心配と安堵が入り交じったものだと表情にも表れていたから、私は謝罪するしか術がなかった。
「工藤君から連絡が来た時、心臓が止まるかと思ったわ」
涙で潤んだ瞳を隠すように、フイと顔を背けられた。
実の姉をジンに殺された過去をまた、リアルに思い出させてしまった。
「大丈夫。ちゃんと生きてるから」
「今回は、でしょう?」
「私には守り神が三人もいるし、みんなにもこっぴどく怒られたし」
「当たり前でしょ!」
「あはは」
「し?」
「何だっけ?」
「元カレと復活したから、呑気に死んでられないし?じゃない?」
「げっ!新一のヤツ、喋ったのね」
「何?私には黙っておくつもりだったわけ?」
「別にそういうつもりじゃ…」
じろりと睨まれた。
「ぷっ。貴女には負けるわ、雪乃」
「…えっ?どのあたりが?」
「色々と、全部よ」
私、貴女よりだいぶん年上なんだけどな?
不機嫌が一転して困ったように、でも楽しそうな笑顔を見せるから、安心した。
「褒められてるのか、貶されてるのか」
「どっちもよ!」
思わずボヤいてみたら、すかさず突っ込みが入って視線を合わせると、二人して笑った。
「……」
「ゼロが相手だと、不満?」
「そんなことは…ないとは言えないかしら?」
「志保らしい」
思わず、笑ってしまう。
新一の話によると、志保は出会った時から安室透に対して、警戒心全開だったそうだ。
「どっちかと言うと…」
「景光との方がって?」
「…まあね」
「あら、素直。景光もスコッチしてたんだけど、全然見えなかった?」
志保はあの組織の人間には、敏感に反応してたもんね。
「そういうことに、なるのかしら?」
「ふふ。イイ男でしょ?」
「なに?まーたお得意のブラコン発動?」
心底呆れた表情をされる。
否定はしないのね、ヨシヨシ。
「そりゃ、あんなにイイ男なら、ブラコンにもなりますとも!」
「開き直って、ホント重症ね。彼も苦労してるんじゃない?」
「かも?」
「自覚無し。やっぱり手に負えないわ」