第7章 *File.7*
今度は雪乃から小指を差し出す。
そもそも雪乃は、お前の女じゃないだろ!
そういうことは、お前の幼馴染の中森青子にしろ!
絡めた小指にそっと口付けをしたのは、俺への宣戦布告だろう。
「では、邪魔者は退散しましょうか」
「是非そうしてくれ」
「ゼロのお兄さんに、強烈なストレートパンチを喰らいそうだしな」
怪盗キッドはウインクを一つして、
「おやすみ、雪乃」
「おやすみ、快斗」
と、言うなりまた、病室の窓から帰って行った。
「…どうかした?」
「とても機嫌が良さそうだな」
「新一と同じで、快斗も可愛い弟だからね」
「ったく、ゼロのお兄さん、だと?」
ゼロ=警察庁警備局警備企画課、公安の影の司令塔を指しているのは、言うまでもない。
「お互い隠し事があると大変ね?」
「他人事だと思ってるだろ?」
「半分は」
「半分?」
「だって、零は私の恋人なんだから、それは共有の隠し事でしょ?」
「……」
こういう可愛いことを無意識に平然と言ってのけるトコは、確実に血筋だな。
「?」
全くの無自覚。
さて、どうしたものか。
可愛くて愛しくて、今すぐにでもこの腕で抱き締めたいのに、それが出来ない。
どんな拷問だよ。
「零」
「ん?」
ちょいちょいと手招きをされたから顔を近づけると、ぎゅっとそのまま抱き締められる。
「今はこれが精一杯。ごめんね?」
「バカ。余計に我慢出来なくなるだろ?」
クスッと笑い合うと、長い口付けを交わした。