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*名探偵コナン* Daylight *降谷 零*

第7章 *File.7*


「……」

多くの人が行き交う大通りに響く、サイレン。
日中街中にいて、特別なことではない。
寧ろ、この街では日常的光景。のはずなのに、何故か同時にザワリと胸をよぎった、不吉な予感。

「降谷さん?」

堪らずその場に立ち止まり目を凝らして前方の様子を探れば、混乱して逃げ惑う人々。
慌ただしく行き来する、事件の事後処理に追われる警官達。
こんな光景ですら、この街では珍しいモノではないはずだろう?

「また後で連絡する」

何もなければ、それでいい。
だが、今は…。
風見に一言告げて、走り出した。


「何があったんですか?」

大通りにある、一つの建物の前。
道路脇に停る、複数のパトカーと刑事達の車。
ざわめきと野次馬が混じり合う中、真っ青な顔で震えながら中の様子を見守る、一人の女性に声を掛けた。

「お、女の人がピ、ピストルで撃たれたの」

視線は現場に置いたまま、口元に掌を被せて声を震わせる。

「撃たれたのは女の人、なんですか?」

瞬時に雪乃の顔が思い浮かんだ。
何故?
今、此処で。
こんなことは初めてだ。
身体の奥が恐怖で震えるのを、ハッキリと自覚する。

「……ええ。直ぐ近くにいた刑事さんを、庇った、みたい」
「有難う、ございました」

どうしてもこう、不安が過ぎる?
どうして、この不安が消え去ってくれない?
その場にいても立ってもいられなくなり、人混みを縫うように現場へと向かった。


「!!!」
「雪乃さんっ!どうしてっ!!」

現場に着くと、この目に一生映したくはなかった光景が、今此処にあった。
生まれて初めて、絶望で目の前が真っ黒になる。
分かってはいた。
俺達は、常に死と隣り合わせで生きていることを。
十分に理解出来ているはずだった。
萩を、松田を、班長を喪った、あの日に。
俺が、雪乃が、景光が警察官である以上、何時かこんな日をまた、迎えてしまう可能性があることを。
逮捕された犯人に拳銃で撃たれたのは、雪乃。
既に意識はなく腹部から止めなく血を流す彼女を泣き叫びながら抱き締めているのは、警視庁捜査一課刑事部の佐藤美和子。

「どうして、どうしてっ…私を庇ったりしたのよッ?!」
「……雪乃っ」


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