第1章 *File.1*
これであの三人も納得してくれる、かな?
わざわざ三人揃って夢にまで出て来て、何故かオレに散々文句と説教を垂れた、今はもういない、彼らの笑顔を鮮明に思い出す。
正確には萩原と松田、か。伊達班長はあの頃と同じで二人の宥め役だった。
「で、さっきのはどういう意味だ?」
「ん?雪乃をオレのモノにするって話か?」
「他に何があるんだ!」
正面からギロリと睨まれる。
「お見合いをして、何処かの見知らぬ男に雪乃は渡せないだろう?」
「お、お見合い?」
「最近兄さんが煩い。歳を考えたらムリはないから有耶無耶にはしてるけど、限度はある」
「人の心配ばっかしてないで、高兄こそ早く結婚したらいいのに!」
「ハハ、確かにね」
小さな唇を突き出して拗ねた。
兄さん曰く、以前、雪乃本人にこの話をしたら、無言で通話を切られたそうだ。
あの兄さんが電話口でしばらく放心状態になるぐらいショックを受けたらしいのは、雪乃にはナイショの話。
お互いの職業柄、オレは今まで何も言わなかったし、オレ達と離れて暮らしていて傍にいなかった兄さんは知らないけど、雪乃はこの通り、出逢った頃から降谷零一筋だ。
「もらうもらわない以前に、お前と雪乃は正真正銘列記とした双子の兄妹だろう?」
子供心に戸籍謄本を見て、三人でこの目でしっかりと確かめた。
「雪乃とは苗字が違うし、幸い顔も似てないから大丈夫」
「そういう問題じゃないだろ」
「一人だけ、ゼロ以外に嫁にやってもいいかなと思う男がいるけどね」
ニヤリ。
「…嫌な予感しかしないな」
「私も知ってる人?」
「ライ」
「赤井、さん?」
やっぱりか!と、ゼロがプイと顔を背けた。
あからさまに嫌悪感を表した表情で。
「ふふ。勿体無いよ」
「…誰が?」
「イイ男過ぎて、私には勿体無いから」
「あのFBIがイイ男、だと?」
揺らりと怒りと嫉妬のオーラが漂うのを知ってか知らずか、雪乃は凛とした声ではっきりとゼロにこう言い放った。
「あのね、ごく一般的な女性の目から見て、赤井さんはイイ男って言うの!ちなみにゼロと景光は、赤井さん以上に超イケメンの超イイ男なんです!いい加減、自覚してください!!」
「「!!」」