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*名探偵コナン* Daylight *降谷 零*

第1章 *File.1*


「だったら、オレがもらおうか?」
「景光?」

更に困惑する雪乃に片目をバチリと閉じてみせると、大きな瞳がキョトンと丸くなった。

「もちろん雪乃、お前をね」
「?!」
「ふざけるなっ!雪乃は誰にも渡さない!!例え景光、お前でもな!!」

安室透改め、降谷零降臨。
部署が違えど警察官で、ついこないだ派手にドンパチやって黒の組織のことが片付き、その所為でゼロも長らく入院もしていたし、同じ黒の組織の一員のスコッチだったオレが言うのは筋違いだと、重々承知の上で、これだけは言わせてもらう。

「ホントにマジで遅すぎ待たせすぎだから」
「……そう、だな」

言葉の意味と深さ、時間の長さを理解したのか、大きく見開いた瞳を軽く伏せると、苦い笑みを洩らした。
自覚があるのなら、何よりだよ。
ホントはお前自身が雪乃を迎えに来てくれたら、それが一番良かったのに。

「ぜ、ゼロ?」

ちなみに何の前触れもなく、セリフ通りオレから奪うようにいきなりきつく抱き締められたゼロの腕の中で、わたわたと慌てふためく雪乃への返答は、

「生涯返品不可。何か問題でも?」
「!!」

身長差から少し身体を離し、顔を覗き込んでの有無を言わさぬ笑顔だった。
完全に開き直って無駄に強気だし、質が悪い。
雪乃は真っ赤な顔のまま、ブンブンと無言で頭を左右に振っている。
あーあ。
今度は安室透になってるし、この卑怯モノ!
天然人間タラシ。
これは喫茶ポアロのハムサンドや半熟ケーキ以上に女子高生をはじめ、女性達に好かれ騒がれするはずだよ。
違う意味で、先が思いやられるな。
この二人が元恋人同士に見えないのは、付き合い出した学生時代からはっきりと一度も別れてはいないから。
例え逢えなくても連絡が出来なくても、誰よりもお互いを大切に想い合っていた時間は、何があっても決して揺らぐことがなかったから。

「雪乃」

可愛すぎる返答に安心したゼロは今度はふわりと優しく腕の中に閉じ込めると、耳元でそっと囁くように名前を呼んだ。
ありったけの愛情を込めた、とても柔らかな声音で。
そのあふれんばかりの想いが伝わったのか、雪乃の細い腕はゆっくりとゼロの身体を抱き締め返し、軽く瞼を伏せた彼の口元には満足気な笑みが浮かんだ。
ヤレヤレ。


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