第6章 *File.6*
「ったく」
「雪乃お姉さん様さま~」
「仕事中だったら、チョー無視出来たのに」
「雪乃は…」
「うん?」
「もし仕事中でも、そんなことはしねぇよ。絶対に」
「…生意気」
不意に真剣な顔見せるの禁止!
君もイケメンなんだから、胸キュンしちゃうでしょうが!
そう胸をときめかせたのも束の間。
買ったばかりのペットボトル片手にコンビニから出た瞬間、私はその場に凍りついた。
「!」
駐車場に停めてある私の黒のハロ(TOYOTA86)の隣には、嫌味なほどキレイに磨きあげられた白のRX-7が待ち構えていたからだ。
見事なまでにタイミングを見計らって、RX-7から優雅に下りてきた。
こっわっ!
「奇遇ですね」
「ゲッ」
声の主を見た黒羽快斗は私と違う意味で、顔を青ざめさせた。
以前、ゼロと一悶着あった、とは聞いている。
「どういったご関係ですか?」
そちらの男子高校生と。と、無言の圧力を感じるのは気の所為ではあるまい。
「たまたま刑事としての雪乃さんにお世話になって、意気投合した。関係ですよ」
ねっ?と、ニッコリ笑ってるその裏側で、あの公安とどういう関係?と快斗の目が訊ねている。
あー、あっちもこっちも説明しないといけないやつ?
私の平穏な休みを返せ!
「そうでしたか」
「ご納得していただけたなら、よかった。 んじゃ、デートの続きとシャレこみますか。雪乃チャン」
「!」
高校生とは思えないひどくスマートな動きで、快斗に肩を抱かれた。
アンタ、わざとでしょ?
ジトッと睨めば、
何のこと?
と、快斗に素知らぬ顔をされた。
ワザと名前を名乗らないのはお互い様、ね。
だからそれについて、何も突っ込まない。
表には一切出さない警戒心は、お互いに凄まじいモノがありますが。
「すみません、お邪魔してしまったようですね。では、行ってらっしゃい」
「……行って、きます」
なに、その真っ黒な笑顔。
今日は家に帰りたくないな。と、内心で真剣にぼやきながらハロに乗り込んだ。