第5章 *File.5*外伝*警察学校編*
「ゼロ、班長、陣平、萩。それから景光、父と母の事件を解決してくれて本当に有難う」
景光と雪乃のご両親を殺害した犯人が逮捕され、あの事件が無事に解決した数日後。
雪乃に招集をかけられた俺達は、彼女に誘われるまま、馴染みの居酒屋へとやって来た。
「兄の諸伏はずっと必死こいて事件を調べてたのに、妹のお前は事件の解決を諦めてたワケ?」
「あー、半分はそうかも。あの日、私は家にいなかったから、両親を亡くしたのを実感したのは、こっちに来てからだったの」
俺達に丁寧に頭を下げた雪乃が、顔を上げて困った表情をした。
幼かった雪乃には、突然の両親の死がよく理解出来ないまま、受け入れられないまま、両親の葬儀が行われて終わってしまったらしい。
「なんで?」
「高兄が林間学校に行くって聞いて、私も一緒に行く!って、かなーり駄々をこねたもんだから、呆れた母に祖父母の家に連れて行かれた」
裏を返せば、母親のあの行動があったからこそ、雪乃は恐怖のあの一夜を景光と共に家で過ごさずにすんだ。
もしかしたらあの時、母親としての直感が何か働いたのかもしれない。と、雪乃も言ってはいたが、真実は分からないまま。
「「「「「くっ」」」」」
その言葉に、顔を見合わせたオトコが五人揃って、吹き出して笑った。
「どうして、景光まで一緒になって笑うの!」
「あの日、雪乃は祖父母に甘やかされて、一人っ子生活を満喫してたんだよ」
「煩いな、もう」
「めっちゃ想像出来るわ、ちっちゃい雪乃」
「…萩、もしかしてバカにしてる?」
「まさか!褒めてるに決まってるじゃん。俺、信用されてないの?」
「日頃の行いを改めてから言え」
萩が大袈裟に悲しげな表情をして自分を指さすから、思わず突っ込んだ。
「降谷ちゃん、酷い!」
「…ゼロ」
「ホントのことだろ」
「それにね。高兄と景光はとっても優秀だから、事件解決は二人に全面的に任せてたの」
「!」
景光は幼い笑顔を見せた雪乃を目を大きく見開いて見つめた後、フイと顔を背けた。
その横顔は赤い。
雪乃の心からの信頼と尊敬の意を直で聞かされて、どうやら照れたらしい。
自分の恋人ならまだしも、相手は実の妹のはず、なんだが?
景光?