第5章 *File.5*外伝*警察学校編*
肩を組まれながらいきなり話をフラれて、ゼロはマジで驚いてる。
「極端だね、伊達君は」
苦笑いで上手く返す。
「じゃあ、中間で諸伏。面倒臭いのが良ければ、松田」
「お、オレ?」
まさかオレまで話を振られるとは思わず、自分を指さしてしまった。
「諸伏はタイプじゃないか?」
「本人目の前にしてタイプとか、ね?」
「そうだよ、ね?」
いや、実の妹だから!
初めてココで視線を合わせて、話も合わせる。
お互い、役者だよね。
いっそのこと、お互いにタイプだ。と、頷いた方が良かった?
「面倒臭いって何だよ!」
「ホントのことだろ」
「何処が!」
「自覚なしか」
ゼロもため息混じりに頭を振る。
「仲良し、だね」
「ンなことねぇし」
「そんなことあるよ」
「で、雪乃チャンはオトコいんの?」
「この場では、お答えいたしかねます」
「えっ?」
雪乃が不意に真面目な顔で答えるから、松田が驚いて立ち止まる。
松田の隣で、伊達班長は雪乃に鋭い視線を向けた。
何かに気付いた、か?
目の前でしっかりと他人顔をしてるゼロと、班長の視線をやんわりと受け止めた雪乃も、きっと同じことを考えてるだろうな。
「なぁんてね。松田君のご想像にお任せします」
次の瞬間には、可愛い笑顔で。
「……」
上手い具合にゼロと直接会話をすることを回避して、お互い見向きもしない。
二人がそういうつもりならと、オレはもう何も見ないフリ、知らないフリを通した。
「ありゃ、現在進行形でオトコいるな」
「えっ?雪乃チャン?」
「ああ。諸伏もそう思っただろ?」
「さあ?」
オレは何も知らない、何も知らないからな!
寮に着いて部屋に戻りながら、呪文のように心の中で唱えて、班長に応えた。
「アレはオトコを知ってる、オンナの顔だ」
「……」
ゼロは興味無さげに無言のままだったけど、班長のその言葉には、さすがに眉間にシワが寄った。
「何を根拠に?」
「勘だよ、勘」
「アテになんねーよ」
えっ?
松田が、雪乃に惚れた??
何、この展開。
最悪、だ!