第24章 *File.24*
「この三日間、腸煮えくり返ってたから、食欲無くてあんまり食べてない」
「で、やっと怒りが解消されて、急にお腹が空いて来た。と?」
「ハイ」
「健康で何よりだ」
「スミマセン」
お互い腕を解いて、雪乃が膝から下りるとキッチンへ向かう。
「……予想通りで嬉しくなるな」
「重ね重ねスミマセン」
開いた冷蔵庫の中は、ほぼスッカラカンだ。
俺が帰れなかった五日間、どんな食生活を送っていたのか、想像に容易い。
「今晩、何を食べるつもりで帰宅したんだ?」
「…適当に、ある物を」
「ある物、か。今からスーパーに行くしかないな。これじゃ、明日の朝ご飯もロクに作れないぞ」
今現在ある物と言えば、米、袋麺、カップ麺、パスタ、冷凍うどん。
見事に炭水化物ばかりだ。
おまけに冷蔵庫には、野菜どころか、卵も豆腐も肉も牛乳までない。
お茶、水以外は正に食べ尽くした、だ。
「……」
「たまにはいいだろ?スーパーに買い物デートも」
「…デート?」
しょぼんと肩を下ろしていた雪乃が、パッと顔を上げる。
「理由はどうであれ、二人で出掛けるのは嬉しくないか?」
「嬉しいっ」
「ほら、行くぞ」
「……」
手を差し出す。
「…雪乃?」
「疲れて、ない?」
「問題ない。今晩、お前を抱き尽くすぐらいの体力はあるよ」
「…それは、私が困ります」
「くくくっ」
視線を逸らしながらも、しっかりと握り返された温かい掌に安心した。
そして、忘れずにキスを一つ。
「ただいま」
「おかえりなさい」
今日もお互いが無事でよかった。
直ぐ近い場所で視線を合わせて、笑顔になる。
二人で過ごす幸せな時間にただ、心を満たされながら。