第24章 *File.24*
「ただい、っ?!」
玄関の扉が閉じると内側からの二段階の鍵を閉め て振り返るなり、まだ仕事着のスーツを着たままの雪乃が俯いた状態で突進して来た。
「…っ」
「…雪乃?」
何時、髪を切ったんだ?!
俺は聞いてないぞ!?
色んな意味で普段と違う、明らかに何かがあった様子に驚きながらも、雪乃を抱き留めた。
タイトスカートの刑事部の時と違い、今は動き易く軽い素材のストレートパンツ。
雪乃はスタイルがいいから何でも似合うが、俺としてはロングスカートやワンピース、プライベートでは女性らしい格好がいい。
そこは本人と趣味が合うから、有り難い。
「…っ」
五日ぶりに帰宅した俺としては今直ぐにでも聞きたいことが出来たのだが、とりあえずは泣いている雪乃を抱き上げて、リビングへと向かった。
「…合わない、か?」
「ん」
抱き上げたままソファに座ったら、雪乃は泣き顔を見せたくは無いのか、首にギュッとしがみついたまま頷く。
「もう、辞めるか?」
「ヤダ」
即答。
それは嫌なのか。
だったら、捜査一課を離れた寂しや辛さではなく、ロクに仕事を教えてもらえない、若しくは仕事を与えられない状況、か。
「悔しい、か」
「ん」
ポンポンと、ゆっくりと軽く背中を掌で叩いてやると、少しずつ呼吸が落ち着いてくる。
雪乃はこう見えても、実は負けず嫌いな性格だ。
このままオメオメと引き下がって辞めてたまるかっ!が、本心だろう。
「景光は?」
「まだ、会って、ない。風見、も」
「そうか」
二人とも多忙な立場だ、無理はない。
公安部に配属されて三日。
緊張ではない。
やはり、腫れ物扱いされている。
捜査一課に比べ、公安は変にプライドが高い人間が多いのは事実だからな。
そんな下らないモノは今直ぐに捨ててしまえ!と俺も思うよ。
国を護る立場である警察官としての誇りは持つべき、だろうが。
「今の心境を一言」
「…クソ上層部。今直ぐ捜一に戻しやがれ、コノヤロー!!」
「くっ」
それだけ言えれば、もう大丈夫だ。