第23章 *File.23*
「遅くなったな。すまない」
「い、いえ」
挙動不審過ぎるぞ。
まさかの出来事に、まさかの真実なのは確かだが。
「……」
どうやら上司の機嫌は治ったらしい。
雪乃様様だ。
さすが幼馴染兼妻だな。
「で、お前は一体誰に感心しているんだ?風見」
「それは…!」
ハッとして、思わず自分の口を押さえた。
「ヤレヤレ」
「す、すみません。まさか、降谷さんの奥さんだとは知らずに…」
「オマケにまさかの双子…」
「構わない。既に風見から言われたとは思うが、箝口令は敷いておく。彼女の夫は安室透であり、公安の僕ではないし、あの二人が双子だと知っているウチの関係者は、僅かしかいない」
裏の管理官、佐藤刑事、高木刑事、目暮警部か。
「「「承知しました」」」
「相変わらず、仲が良いんですね」
「ああ」
一言の返答の後に大きなため息が付属されたのは、潜入捜査で離れていた時間の長さの分か。
それでもこの人は…。
「どうかしたか?」
「いえ」
「では、行くぞ」
「「「「はい」」」」
自らのその一言でプライベートの表情は消え、公安の降谷零に戻る。
彼に倣い、部下達も仕事モードに入った。
何時何処にいても色んな意味凄い人だと、改めて頭が下がる。
ただまあ、別の意味で苦労しているのはお互い様なんだろうなとは思ったのは、誰にも秘密だ。