第23章 *File.23*
「景光?」
「プレゼント。雪乃を一人には出来ないから、買いに行くタイミングが無かった」
「いいの?」
「今更遠慮する仲じゃないだろ?思ったより気温が下がって来たから、気になってたんだ」
今着ている洋服に合わせた、淡い色使いのストール。
袋は要らないとタグも取ってもらい、戻って来るなり雪乃の首元に巻いた。
「ふふっ。あったかい。有難う、景光」
柔らかなストールの肌触りを指先で楽しみながら、ふわりと笑う。
「ああ。よかった」
「大切にするね。景光は帽子?」
「一応、変装用に」
と、キャップを目深に被る。
「ねえ、赤井さんに変装習ったら?」
「…そこまで必要?」
「お互い変装したら、面白いかもよ?」
「全くの別人に?」
「うん」
「でも、ゼロには一発でバレるんだろうな」
「私もそう思う」
「面白そうだから、試してはみたいけど」
「だよね」
雪乃と顔を見合わせて、クスクスと笑った。
きっと今頃、部下達の元へ戻りながら、くしゃみの一つや二つをしていることだろう。