第23章 *File.23*
「奇遇だな」
「「!?」」
背後から声を掛ければ、仲良く二人揃って、身体を震わせた。
「「ゼロ…」」
「こういう予定があったとは聞いてないが?」
「悪いな。今朝、オレが誘った」
「やはりか」
「…バレ、ちゃった?」
複数の視線を感じたのか、道路を挟んだ路地を向くと頭を下げた。
あちら側では、風見が頭を下げる。
「今風見が説明してるだろ」
「あらま」
「これからは変装するか」
「ちょっとは慎め!」
「色々と不便ねえ」
「……」
ったく、この双子は!
白昼中堂々と、不倫らしきことをしていると思われても不思議ではないんだぞ?
それも、警視庁の警察官同士の!
「今から交代するか?」
「出来るワケがないだろ」
分かってて、聞くな!
「じゃあ、今日一日、オレが雪乃の傍にいるからご心配なく」
「……」
トラブルメーカーだけに一人で出掛けられるよりは安心だが、それはそれでムカつく。
「ふふっ」
「「雪乃?」」
「?」
コートを引っ張られた次の瞬間、耳元で優しく囁かれた。
「何時何処にいても、私はゼロを愛してる」
「!」
どうやら、俺の今の感情は雪乃にはダダ洩れだったようだ。
「嫁からの愛の告白は偉大だな」
「そこは聞かなかったフリをしろ」
「くくくっ」
「ったく」
「ゼロ」
「ああ」
「?」
キョトンと首を傾げた雪乃の髪にポンと触れると、景光はこの場を離れた。
「いいの?」
「景光が戻って来るまでだけだ」
「びっくりしたけど、ちょっと得した気分」
「俺に逢ったから、か?」
「他に何があるの。仕事中に会うことなんて、早々ないでしょ?」
「なら、いい。前から考えてはいたんだが、月末辺りにゆっくり出掛けないか?」
来月になれば、公安に異動する雪乃自身がそれどころではなくなる。
「うん!そうねー、あ!寒いし、温泉がいいかも」
「長野は日帰りだったからな」
「近場でいいから、二人でのんびりしたい」
テーマパークは先日行ったばかりだ。
「いい場所を探しておくよ」
「うん!」
そうして景光が戻って来るまでの間、長い列に並びながら他愛ない話に弾んだ。