第22章 *File.22*
「ただいまー」
「おかえり」
「……」
「雪乃?」
「ふふっ」
廊下に出ると、スリッパも履かずに走って来るなり、そのまま腕を伸ばして抱き着いてくるから抱き締め返す。
「あれから、何かあったのか?」
「ううん。今日は子供達に会って元気を分けてもらったけど、やっぱり私の元気の一番の源は、零の存在だと思ったの」
「それなら、よかった」
「あ!ごめん。汚れてるのに」
「気にしなくていい」
雪乃が無事に帰って来た。
俺にとって、今は何よりもそれが一番大切だ。
「…ン。零?」
「おかえりのキス」
突然のキスに驚いて目を見張る雪乃に、軽くウインクしてみせる。
「いいね」
「じゃあ、今日から毎日」
「うん」
今日みたいに、どちらかが玄関に出迎えに来れる日は此処で。
「約束だ」
「おばあちゃんになっても?」
「もちろん」
「じゃあ、今度は約束のキス」
「いくらでも」
額を合わせて微笑み合うと、双方から唇をそっと重ねた。