第22章 *File.22*
『こんにちはー!』
「こんにちは」
「今日は安室さんがいるー」
「君達とはしばらくご無沙汰でしたね」
「みんな、今日は来て良かったわね」
「どうしてですか?」
「実は僕、明日でポアロを辞めるんです。まだ誰にもナイショですよ?」
『えーっ!!』
人さし指を口許に当てると、子供達の大声が狭い店内に響き渡った。
「だから誘ったのかよ?博士」
「ハハハ。ワシはほれ、雪乃君経由で志保君から聞いとったからの」
「どうして辞めるんですか?」
「あ!もしかして、店休み過ぎて、追い出されんじゃねーの?」
「……」
過去のコナン君との日頃の探偵活動の成果なのか、中々の鋭い指摘だ。
「まさかー。安室さん目当てのJKは、まだまだたくさんいるんだから」
「そんなことはありませんよ」
「またまたご謙遜をー」
「梓さん…」
「結婚しても、変わらず大人気ですからねー」
「ヤレヤレ」
ため息を洩らしながら、テーブルにお冷とおしぼりを並べる。
「望月刑事はお仕事ー?」
「年末の刑事さんは忙しいからのー」
「ええ」
歩美ちゃんの問いに応えた阿笠博士の言葉に、小さく頷いて同意した。
昨夜も帰宅時間は遅かったし、毎年恒例ではあるが、特にクリスマスから年始に掛けての各警察署は、大なり小なり事件事故のオンパレードで多忙だ。
それに雪乃は、捜査一課としての年末はこれが最後になる。
下手をしたら、来年以降の方が多忙の可能性も捨て切れない。
「!」
おや?
「今からお昼ですか?」
「うん!その前に御手洗借りまーす」
「どうぞ」
カランとドアが開くなり御手洗に直行しながら、雪乃が返事をした。
「高木刑事と佐藤刑事も!」
「あら。みんなお揃いなのね」
「こんにちは」
子供達の隣のテーブル席に座りながら、二人は優しく笑う。
今だけは、刑事の重責を脱ぎ去って。