第21章 *File.21*
「あの二人、いいコンビよね」
「同感」
「服部君、こっちの大学受けたらいいのに」
「で、そこに黒羽君も参戦すると?」
「面白そうだから、見てみたいー」
洗い物を全て終えると確認事項を済ませて、ポアロの裏口の鍵を閉める。
「ついでに白馬君も入れるか?」
「彼はねー、快斗が面倒臭いだろうから入れなくていいかも」
「確かに。では、お手をどうぞ」
工藤君と黒羽君は好敵手でもあるが、互いに良き理解者でもある。
「ん」
指を絡めて、恋人繋ぎ。
正しくは夫婦だが。
「ご飯はどうする?」
「今日は和食がいい」
「和食か。冷凍庫に鮭はあるか?」
「まだ残ってるよ。他は味噌に卵もあるし、何とかなるかな」
「だったら、このまま帰るか?」
「うん」
こちらを見上げ、コクリと頷く。
年齢不相応の、幼げな可愛い笑顔で。
「……」
我慢出来る、のか?
「どうかした?」
「理性と闘ってるところだ」
「…何故?」
「決まってるだろ」
「うん?」
「俺は雪乃を愛してるから」
「!!」
「ふっ」
思わず立ち止まり、街灯に照らされた雪乃の顔が一瞬で真っ赤に染まった。
何時まで経っても、こんな時の反応は学生時代から何も変わらなくて、今はただ、雪乃が愛しいという感情しか湧かない。
「…はっ、反則!」
「それはお前の方だ、雪乃」
「なんで?」
「ハア」
今度は首を傾げてキョトン、だ。
自覚してくれ。
それは俺が言いたい。
「?」
「そんな可愛い反応されたら、抱きたくなる」
「っ!」
そう散々言い聞かせているはずなんだが、本人に自覚がなければ、暖簾に腕押しと同じか。
繋いだままの手を引いて耳元で囁けば、ビクリと身体が跳ねた。
「覚悟しといてくれ」
「…バカ」
「バカで結構」
「まーた開き直ったー」
「こんな俺は嫌いか?」
「ムッ」
眉が寄った次は、唇を尖らせる。