第4章 *File.4*
「もう二度と来ない」
「それが出来ればいいけどな」
顔に集まった熱を取るため手団扇でパタパタすると、目の前のイケメン高校生は、ニヤリと意味深な笑みを見せた。
「止めてよ、その不吉なセリフ」
「相手が悪ぃだろ。雪乃さんじゃ、ぜってー勝てねぇよ」
子供の頃から、嫌という程自覚はあるけど!
面と向かって改めて言われると、何かすごく否定したくなる。
「あの安室さんが誰かを呼び捨てにするなんて、初めて聞いたね」
「…あー、そうだな」
景光と風見、は、知らないか。
新一も同じ顔を思い浮かべたはずだ。
「でもそれだけ安室さんにとって、雪乃さんは大切な人ってことだよね、新一」
「だな」
「……」
ああ、此処にも安室透に洗脳されているJKが一人いた。
うん?
ちょっと待って!
だったら、その安室透兼降谷零の恋人である私は一体どうなるの?
それも、かれこれ10年以上もよ?
ってか、私が一番問題なんじゃないの?
このままでいいの?
この先、大丈夫か?私……。
「う~ん」
「考えるだけ無駄だって。今更別れらるわけねーんだからよ」
「えっ?そんなに顔に出てた?」
「赤くなったり青くなったり。オマケに百面相しすぎ」
「雪乃さん、可愛すぎます」
呆れた顔の新一とは対象的に、蘭ちゃんがクスッと楽しげに笑った。
「有難う?」
「どっちが年上なんだか」
「それは雪乃かと」
「丁寧に答えなくていい」
「お待たせしました」
しばらくして注文の品を運んで来たゼロは、新一と蘭ちゃんの前に淹れたてのコーヒーを、私の前にはアイスミルクティを置いた。
「刑事さんの雪乃さんはカッコよくて素敵だし、今の雪乃さんはキュートで可愛くて。それに…」
「それに?」
口元に右手を添えてナイショ話をするように私とゼロの顔を交互に見つめるので、ゼロと私は蘭ちゃんの方へと顔を寄せた。
「お二人が一緒にいるのは初めて見ましたけど、安室さんと雪乃さん、とてもお似合いですよ?」
「「!」」
茶目っ気を帯びた、めっちゃ可愛いJKが此処にいる。
景光達以外にそういうコト言われたのは、初めてじゃない?
子供の頃からゼロと景光が超ハイスペック男過ぎて、私は周りの女達には妬まれてばっかだったし!
オマケに長い間、離れてたし!