第21章 *File.21*
「長年刑事してると、色々ツテが出来ちゃうのよねー」
ムフフと、楽しげに笑う。
「雪乃さんは警視庁刑事部の、初代マドンナだからな」
「それはもうとっくに美和子に譲ったわよ」
「そんなことねーって。ですよね?」
「まあね」
「なんでよー」
「だったら、今からでもオレの妻になるか?」
「景光?!」
「「えっ?!」」
高校生探偵二人は、驚いた顔を見合わせる。
「まーた、お前は」
「オレは安室みたいに意地悪は言わないよ」
「…ありがとね、景光。私も景光が大好き。でも、私がゼロの傍にいたいの。彼らが迎えに来てくれる、その日まで。だから、ゴメンね」
「「「「!!」」」」
ああ。
今すぐ抱き締めたい。
どうしてもこう、何時もTPOを選ばずにスイッチを押してくれるのか。
「だったら今は、安心だな」
「何ですか?その今は、って」
「言葉の通りだけど」
しれっと言うな!
「姉ちゃん、モテモテやな」
「そう?君達も、早くおこちゃま探偵は卒業しなよー」
「「…おこちゃま」」
「雪乃」
「どういう意味や?」
「へっ?」
窘めるように名を呼ぶとムッとした雪乃の表情が、その服部君の言葉に一気に抜け落ちた。
「「「……」」」
本気で言ってるのか?
俺と景光、工藤君は思わず視線を合わせ、沈黙する。
「深い意味は無いから、大丈夫!」
「「「……」」」
店内に流れた微妙な雰囲気をかき消すかのように、雪乃はニッコリと笑って誤魔化した。