第20章 *File.20*
「やめておくか?」
「…我慢、出来るの?」
「俺が?」
「えっ?私が?」
「…出来るわけないだろ」
どれだけ、愛してると思ってる。
今直ぐにココで抱き潰したいぐらいに、お前への想いは膨らんでいる。
パーク内にあるはずのホテルまでの距離でさえ、もどかしくて仕方ないというのに。
「…私も」
「素直でよろしい」
「ホント困るよね」
「何が?」
前を向いていた視線が、ゆっくりとこちらに向けられた。
言葉通りに、ほんの少しだけ困ったような笑みをのせて。
「零への愛に上限がないから。同じ時間を過ごす度に零が好きになる。不思議ね」
「俺もそう思ってるよ。幼い頃から変わらない性格も、大人になって変わったところも、逢えない時間の間にとても綺麗になったトコも、雪乃の全部」
「…ありがと」
「俺の方こそ、有難う」
ようやくホテルに戻った俺は、雪乃に休憩なんかさせるはずもなく、半ば強引にバスルームへと直行させたのは言うまでもない。