第20章 *File.20*
「ふっ」
「?」
「まーたウルウルしてるだろ」
「だってー」
パーク内のディスプレイもイルミネーションも、パーク内を楽しむ恋人達も家族連れも友達同士もみんな、クリスマス一色に染まっている。
今は大音量で流れる、聞き慣れた音楽に反応しているのか、それとも夜のテーマパークの雰囲気に流されるのか、或いはどちらもなのか?
目の前には、毎年恒例のクリスマスバージョンの夜のパレード。
世界的に有名なキャラクターが大きな乗り物の上で踊りながら大勢の観客に手を振りつつ、ゆっくりと通り過ぎて行く。
そこには雪乃が一番好きなキャラクターもいるせいか、暗闇でも分かるぐらいにそれを見つめる瞳はキラキラして、口元には満面の笑みを浮かべている。
「そういう可愛いトコは何も変わらないな」
「ん?」
「子供の頃から」
「…ダメ?」
「可愛いって言っただろ」
「…バカ」
「今日は三回目」
「何が?」
「俺にバカって言った回数」
「ゔっ」
見上げた視線がそらされる。
「構わないけどな。照れ隠しなのは知ってるから」
「!!」
「知らないとでも?」
「意地悪。でも…」
「でも?」
「………」
「雪乃?」
急に固まったまま返答がないから、顔を覗き込むと、
「ふふっ」
「?」
「アイシテル」
「!!」
悪戯っ子の笑みのまま襟元を掴まれて、重なった唇。
「これで済むわけが無いだろ?」
「!?」
そのまま雪乃を抱き締めて自由を奪うと、更に深く口付けた。
「もう!」
「仕掛けたのは雪乃だ」
「だからって!」
「大丈夫。みんなパレードに夢中だよ」
「それはそうだけど!」
「では、帰りましょうか?お姫様?」
「はーい」
「キスの続きはパレードの後で。なんてな」
「!!」
「くくくっ」
軽くウインクしてみせれば、照れてプイと顔を反らしてしまった。
さて、今宵はどう抱き尽くそうか?
勿論、寝かせるつもりはないから、覚悟しろ。
「何か…」
「ん?」
「変なコト考えてない?」
「否定はしない」
「やっぱり」
明らかに疑わしい目つきの後は、深いため息を一つ。