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*名探偵コナン* Daylight *降谷 零*

第20章 *File.20*


「…零?」
「望月警部は精神不安定と言う名の体調不良のため、本日は早退することになった」
「…うん?」
「だから、大人しく座っておけ」

ハロの運転席に座った零はシートベルトを閉めた後、ようやく私と視線を合わせると、同じくスーツ姿のまま穏やかな表情を見せる。

「はーい」
「いい返事だ」

柔らかな眼差しのまま、零はポンと私の髪を優しく撫でた。

「…早退したの?私」
「明日から二日間の有給と共に、手続きは済ませて来た」
「…風見が?」
「ああ」
「オマケに有給まで取ったの?それも二日も?」
「たまり貯まった有給を、こういう時に使わずに何時使うんだ?それに」
「それに?」
「あのまま仕事に戻ったところで、ショックで仕事にはならないだろ」
「…うん」
「刑事だって一人の人間だ。本人の意思とは関係なしに体調不良にもなれば、病気や怪我もする」
「…うん」
「この先、公安に異動しても雪乃は一人じゃない。俺と景光がいる」
「…また、守られるの?」
「何時何処にいても、俺はお前を護るよ。そう決めて、今まで生きて来た」
「…ズルい人ね」
「またそれか?」
「零に喜ばせてもらってばかりじゃん」
「だったら、俺は幸せだ」
「…だから、そういうトコもズルいって言ってるのに」
「俺も雪乃には何時も幸せをもらっているから、お互い様だ」
「…何時も?」
「望月雪乃という一人の人間の存在に、だ。景光と雪乃を産み育ててくれたご両親には、感謝してもしきれない」
「それは私も同じだよ」
「俺と雪乃が同じことを思い合っているなら、雪乃は自分だけが、なんてことは考えなくていい。寧ろ、俺に愛されているんだと自惚れてくれるぐらいがちょうどいいよ」
「…バカ」
「ふっ」
「こんな場所で泣かせないで」
「家ならいいのか?」

揶揄うような声と共に前を向いたまま伸びて来た指先が、涙で濡れた目元を拭う。

「…ココじゃ、零に抱き着けない」
「後で、いくらでも抱き締めてあげるよ」

今直ぐギュッと抱き着きたい。
零の温もりに包み込まれたい。


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