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*名探偵コナン* Daylight *降谷 零*

第19章 *File.19*


『そろそろ切るね』
「ああ。雪乃…」
『なーにー?』

間延びした暢気な返事の後、耳元で囁くようにこう告げてみた。

「アイシテル」
『っ!!』

ハッと息を飲む声が聞こえたと同時に羞恥心が全開になったのか、直ぐに無言でブツリと音を立てて通話が切れた。

「くくくっ」

今の雪乃の心境が手に取るように理解出来て、車の中で一人、また笑わずにはいられなかった。



「さっきのは、さすがに効いた」
「…そう、なの?」
「ああ」

エレベーターの中、お米を胸の前で抱えたまま、まだ恥ずかしそうに俯いていた顔が上がった。

「そっかー」
「嬉しそうだな」
「だって、零を驚かせるのは難しいもん」
「俺としては、お前のその想定外の行動力には、何時も存分に驚かせてもらってるけどな」
「……はて?」
「……」

これだ。
自覚症状皆無。
幼い頃から、本当に変わらない。
ずっと傍にいた、俺と景光がどれだけ振り回されたか、全くを持って分かってない。

「ってかさー、仕事中の零の無茶振りも、相当なモノだと思いますよー?」
「……」

心当たりは、なくもない?

「風見も大変ねぇ」
「…俺の心配は、なしか?」
「バカね。何時もどんな時も誰よりも、零の心配してるに決まってるでしょ?零の無事を祈らない日なんて、一日足りともないんだから」
「!」

どうしてこうも、こういう時だけストレートに感情を打ち明けるのか。
それも、愛情を含んだ綺麗な笑顔で。

「あ、照れた」
「……」
「可愛い」

視線をそらした俺をジッと見上げたまま、今度はクスッと笑みを洩らす。

「イイ歳した男に、可愛いとか言うな」
「えーっ。だって、ホントの、んっ!」

ヤレヤレ。
エコバッグを持たない方の手で壁ドンをすると、キスをして黙らせた。
これ以上は、俺の方が持たない。
いろんな意味で。
ったく、何時もどんな時も可愛い過ぎて困った妻だよ、雪乃は。


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