第18章 *File.18*(R18)
「とんだトラブルメーカーだ」
「…私が?」
「まるで俺が落ち着くのを見計らったみたいに、一気にトラブルが押し寄せてる気がするよ」
「そういえば、離れていた時より今の方が酷いかも?」
「入院はしたけどな、三回」
「ちゃんと知ってるし」
「当然だろ」
「当然、なんだ?」
「逢えなかった時間も、お前への想いは何一つ変わらなかったよ」
本当は変わらないどころか、逢いたくて抱き締めたくて触れたいと言う願いは、日々重なり募るばかりだった。
だが、その想いと同じぐらいに何時も傍で護れないことが、とても心配で不安で仕方なかった。
何時何処にいても、お前は無茶をしでかすから。
何時だって、自分以外の誰かの為に。
さも当たり前のように、自分を犠牲にしてまでも。
「零を信じてよかった」
「俺を信じて待っていてくれて有難うと、今では感謝の言葉しかない」
「でもホントは…」
「?」
「私自身が待っていたかっただけ。もしあの時、拒否られてたら、高兄からのお見合いを受けて、長野に帰ってたかもしれない」
「そういえば、あの時…」
景光が言ってたな。
「うん。いくら刑事やってるからって、年齢的にも仕方ないでしょ?いくら高兄が実の兄でも、零のことは言えなかったから」
だから、景光もずっと誤魔化してくれていた。
「……」
困ったように、雪乃が笑う。
あの兄からの提案なら、雪乃は折れて、お見合いを引き受けていたかもしれない。
「陣平達が言ってた。夢の中で景光に急かしたって」
「俺と雪乃を逢わせろって?」
「うん」
「お前は一体どれだけ周りの人間に愛されてるんだ」
「そんなこと…」
「あるだろ。超シスコン兄貴二人から始まって、義理の両親、仕事仲間、工藤君の周りの人達。極めつけは松田と萩、班長からも、未だに心配されている」
「だから?それでも?だけど?」
「雪乃を一番愛してるのは、俺だ。それだけは絶対に誰にも譲らない」
「高兄にも?景光にも?」
「当然だ」
「私だって、零への愛は誰にも負けない。誰にも譲らないよ」
「ああ」
右手を離して柔らかな頬に触れるとふわりと笑うから、堪らなくなって、唇を重ねた。
雪乃への想いは溢れるばかりで、一度として止(とど)まることはない。