第18章 *File.18*(R18)
カラン
「一体どうし、た?何故、貴方が一緒にいるんです?」
雪乃の直ぐ後から店に入って来たのは、沖矢昴。
「先程、助けてもらいまして」
「偶然乗り合わせた電車の中で、ね」
「電車の中で?」
「常習犯の、変態オヤジにお尻を触られました」
「!?」
尻を触られた、だとッ?!
雪乃に触れていいのは、俺だけだ!
許せるわけがない。
タダで済むと思うなよ?痴漢の常習犯。
さぁて、どう報復してやろうか?
「たまたま駅のホームで彼女の姿を見かけて、その対策にと思ったんですが、間に合わずにすみません」
「とんでもない!凄く助かりましたから」
「で、犯人は?」
「現行犯で取り押さえて、鉄道警察に引き渡して来ました」
「…ハロは?」
終始コイツが付き添ってくれたなら、安心か。
「帰ろうと思ったら、エンジンが掛からなくて。ディーラーに連絡して、明日引き取りに来てもらうから、置いて来た」
「先ず、その時点で連絡を下さい」
「はーい」
「で、彼女は?」
沖矢昴の言葉に、雪乃の視線がチラリと向けられる。
「僕をからかいに来ただけ、ですよね?」
「さあ、どうかしら?だって、貴方イイ男だもの」
まーた、心にも無いことを。
過去を遡っても、微塵だって一度だって、俺をそんな目で見たことないだろ。
それはお互い様、だが。
「彼が超ハイスペックでイイ男なのは貴女もよーくご存知のはずですから、今更、ですよね?」
「真顔で褒めてますが?」
「嬉しくて、涙が出そうですよ」
「仔猫ちゃんは、私のことを知ってるのね」
「貴女方のことは、夫と友人達に色々聞きましたから」
「…友人?」
「スコッチ、ライ、キール。それから新一と志保からもね」
「…貴女、一体何者なの?」
「貴女方が言う、バーボンの嫁です」
「ただ、職業が警視庁の刑事、なだけですよね?」
「昴さん、それは要らない情報だから」
「なるほど。見た目通りの、ただの可愛らしい仔猫ちゃんじゃないってわけね」
そう言って、ベルモットはその目を細めて雪乃を見つめた。