第17章 *File.17*
「またな」
「由衣姉にも宜しく伝えといてね」
今日はたまたま非番の上原さん。
勘助君は電話して呼ぶと言ったのですが、せっかくの非番が勿体無いから、わざわざ来てもらわなくていい。と、雪乃は断った。
「おぅ」
車に乗り込んだ二人。
そして、助手席の窓を開けて手を振る雪乃、運転席で一礼をした降谷君を見送った。
「ったく、帰る直前まで騒がしい女だな」
「でも、雪乃はイイ女。でしょう?」
「はあ?お前は一体何処までシスコンなんだよ」
「否定はしないんですね」
「ノーコメントで」
「その返答自体が、肯定していると受け取りますよ」
「勝手にしろ」
降谷君の車が視界から消えたと同時に、踵を返して先に歩いて行く。
「勘助君、今や貴方も立派な雪乃の兄の一人ですよ」
「いーや、俺は認めねえ」
「はいはい」
自覚はあるくせに。
中々いいコンビですよ?
貴方と雪乃も。
剃ると約束したばかりの髭を撫でながら、私はたった今別れたばかりの妹の笑顔を思い出していた。
「あのかわい子ちゃん、諸伏の妹なのか?」
「何ですか?そのかわい子ちゃんって」
「いや、普通に凄く可愛かったぞ?」
「私の実の妹です。ちなみに一緒にいた彼は、妹婿ですよ」
「婿っ?!」
「新婚ホヤホヤです」
「で、黒田管理官とも知り合い?」
「妹は刑事なので」
「「はっ?」」
「マジで?!」
「おー、ああ見えて、警視庁の立派な女刑事だぜ」
「「み、見えない」」
「だよな」
「私の自慢の妹ですから」
「出たよ、超シスコン高明」
「シスコン、だったのか?それも超?」
「ええ」
「自覚があって何よりだが、即答で肯定すんなよ」
「本当のことですから」
「オマケに妹も超ブラコンだしな」
「妹が刑事ってことは、あのイケメン婿も刑事?」
「彼は私立探偵で、同じく探偵の毛利さんや警視庁の刑事さん達とも顔見知りなんですよ」
「刑事も探偵も似たような職業、か」
「俺らも毛利のオッサンとは顔見知りだしな。世間は狭いってやつだ」
「にしても、似てないよな?」
「確かに容姿が似てると言われたことは、一度もないですね」
「ってか、いい加減仕事に戻れ。黒田のオッサンが来たら、ドヤされるぞ」
「……助かりました」
「おー」
暫くは二人のことを根掘り葉掘り聞かれそうだ。と、ため息を洩らした。
