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*名探偵コナン* Daylight *降谷 零*

第17章 *File.17*


「おやおや。まさかこんな場所で会うとは、奇遇だな」
「えっ?!」

この声は?!
と、雪乃が物凄い形相で振り返る。
失礼なぐらいに、顔にハッキリ書いてますよ。
『なんでアンタが此処にいるの?!』
ってね。

「くっ、くくく」

思わず、吹き出して笑う。
雪乃の横で、顔を背ける降谷君。
笑いを堪えるのが、大変そうですね。
私達以外にも関係者がいるこの食堂では、降谷君の立場は伏せておく必要がある。

「く、黒田管理官?!」

食堂にあるカップ入りのコーヒーの自販機に小銭を投入すると、ブラックを選んでからこちらを振り返る。

「ご両親とお兄さんに、結婚の報告かな?」
「ええ、まあ」
「職業柄、お互いに大変だとは思うが、末永くお幸せに」
「…有難う、ございます」

降谷君は無言のまま一礼をし、雪乃は黒田管理官が珍しく見せた穏やかな表情に瞬きを何度か繰り返した後、ふわりと笑った。

『!!』

その表情を見た私、管理官、勘助君、それから降谷君も目を見張って驚く。
それは決して仕事中には、身内以外には見せないだろう、幸せに満ちた笑顔、だったから。

「……」

お前も苦労するな、降谷。

「!」

管理官のそんな視線に気付いた降谷君は直ぐ様に眉を顰めて、フイと視線を逸らした。

「?」

当の本人は、呑気に首を傾げている。

「で、何でわざわざウチまで来たんですか?」
「急に蕎麦が食べたくなってな」
「はっ?」

管理官に訊ねた、勘助君の間抜けな声が響く。

「冗談だ。とある事件で気になることが出来たから、調べに来た」
「…管理官、直々に?」
「電話では分からんこともあるだろう?人に聞くより自分で調べた方が早い。資料室を借りるぞ」
「は、はい」

自販機から淹れたてのコーヒーのカップを手に取ると、食堂を慣れた足取りで歩いて行く。

「では、また本庁で。ごゆっくり」

入口の前で振り返ると、そう言い残して、管理官は食堂を出て行った。

「いや、私はもう当分会いたくないデス」
「「「くっ」」」

管理官の姿が消え去った瞬間に真顔でそう呟いた雪乃を見て、私達三人は今度は堪えることをせずに、声を上げて笑った。


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