第16章 *File.16*
「キミほどじゃないよ」
「またまたご謙遜を。私にはそんな記憶はございません」
「もしかしなくても…」
「世良ちゃん?」
「裏で相当揉み消していた、んじゃないのか?」
「僕がそんな卑怯なマネをするとでも?」
それはもう、景光とあの手この手を使ったよ。
勿論、証拠は一切残さないし、雪乃にもバレないようにね。
「間違いなくするね、アンタなら。なるほど!裏じゃなくて堂々と、か?」
「どうして?」
「学生時代の雪乃さんも絶対モテてた。からでしょ?」
首を傾げる園子さんに、蘭さんが応える。
「何なら、写真見ますか?」
「や、やめてー!!ってか、何であるの?!」
「僕の宝物ですから」
「ヤダー!!絶対消すー!!」
「絶対ダメです」
ニッコリ笑って、拒否した。
まあ、スマホの写真を消されても、PCに厳重保存してあるから問題はない。
「「「ふっ、ふふふ」」」
三人揃って、クスクスと笑い出す。
「?」
「雪乃が可愛いから、ですよ」
「!」
「ホントに」
「雪乃さん、今でもモテモテでしょ?」
「有り得ません」
「子供ですか?貴女は」
「ムッ」
プイと顔を背ける雪乃の髪に、ポンと触れる。
ついこないだ、管内であんなことがあったから、無理はない。
「そろそろ、帰りましょうか」
「うん?」
「デートの時間、ですよ」
ポアロの勤務時間も終了だ。
「……ん」
壁掛け時計で時間を確認すると、小さく頷く。
「雪乃さんって、見てて飽きないよなー」
「「うんうん」」
「えっ?観賞用生物なの?私」
「プライベートになると表情はコロコロ変わるし、言動は面白いし」
「オマケに私らより、めっちゃ可愛いし?」
「ダメですよ」
「「「「?」」」」
女性四人の視線が、一斉にこちらに向いた。
「雪乃は誰にもあげませんよ。これから先もずっと、雪乃は僕だけのものですから」
「「「「!」」」」
勿論、真っ先に反応を示したのは、雪乃。
「ご馳走様ー!」
と、言いながら、あっという間にポアロから出て行ってしまった。
「「……雪乃さん?」」
余りにもの速さに蘭さんと園子さんは目を点にして、既に音を立てて閉まった後のポアロの出入口を見つめている。
刑事の脚力発揮、だな。