第16章 *File.16*
「高校生の頃からですか?」
「ええ」
「愛されてますね、雪乃さん」
「貴女も新一に十分愛されてるから、大丈夫」
貴女、も、か。
俺に愛されている自覚がないとは、言わせない。
「もうヤダ~、雪乃さんったら!」
「いだっ」
言葉と同時に、べシッとスナップが効いた音が響いた。
叩かれた肩を押さえる雪乃は、涙目だ。
あまりにも高速過ぎて、避けるヒマもなかったらしい。
さすが、空手部元主将。
「ら、蘭?」
「いったそ~」
「えっ?ヤダ、私ったら!ごっ、ごめんなさい、雪乃さんっ!」
園子さんの引き攣った表情と声音に蘭さんが正気に戻り、慌てて謝罪する。
「もう痛くないから、ご心配なく。現役JK。若いって、いいわねえ」
「発言がおばさん臭いですよ」
「さすがにJK三人に囲まれたら、おばさん臭くもなりますよーだ」
「でもさ、雪乃さんなら、今高校の制服着ても違和感なさそうだよな」
『うん。似合いそう』
「……」
頭の中で、雪乃に帝丹高校の制服を着せてみる。
いいな、うん。
「はっ?何言ってんの!?似合うワケないでしょ!」
雪乃をジーッと上から下まで見下ろして蘭さんと園子さんが頷けば、雪乃は大袈裟に手を左右に振りかざした。
「雪乃さんはスタイルいいから、ついでにセーラー服も全然イケそうじゃん」
「世良ちゃん、勝手に色々想像するのはやめてー!」
顎に手を当てて想像する赤井の妹に、雪乃は頬を紅く染める。
「アンタは、どう思う?」
「どちらも似合うんじゃないですか?」
「ばっ、バカっ!」
「現に着ていたでしょう?」
「一体何年前の話してるのっ?」
「かれこれ12年ほど前ですね」
「歳がバレるから!」
「ちなみに安室さんは学生の頃は、ブレザー派?それとも学ラン派?」
「学ランですよ」
「モテたでしょ?」
「まさか、ね?」
「モテないワケがないですよ、ね?」
どの面下げて、どの口が言ってるの?
目がそう言っている。
そう、その目以外は、可愛い笑顔だ。