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*名探偵コナン* Daylight *降谷 零*

第16章 *File.16*


「やっと二人揃った!」
「へっ?」
「僕と雪乃が、と言う意味らしいですよ」

どうぞ。と、未使用のペーパータオルを手渡す。

「ありがと。何で?」
「すみません。私があれこれ話しちゃったものだから」

濡れたままの手を拭きながら、蘭さんのその言葉で概ね理解出来たらしい。

「あー、ね。謝られても、ね?」
「結婚しているのは事実ですから、ね?」
「……改めて言われると、恥ずかしいから」

スイと視線を逸らされた。

「から?」
「これ以上はノーコメントで」
「くくくっ」

こういうところは、昔から変わらない。

「それはダメですっ!」
「私がいなくても、此処には安室さんがいるんだから、彼に聞けばよくない?」
「……!」

『透』とは呼んでくれないって、雪乃には一度たりともその名で呼ばれたことがない!
ああ、きっと。
俺であって俺では無いその名で、呼びたくはないんだ。
付き合い始めてから『ゼロ』ではなく、『零』と名前で呼んでくれるようになった。
だが、他人がいる時どころか、景光と三人でいる時でさえも決して名前で呼ぶことはない。
俺と雪乃、二人きりの時だけにしか『零』と呼ばない。
言葉にはしないが、雪乃にとって俺は特別な存在。
その証の一つなんだ。
改めて知った、雪乃からの深い愛情。
今直ぐにこの場から連れ去って、感謝の想いを伝えたくなるよ。
俺の全身全霊の愛情を込めて。

「二人一緒がいいんです!」
「彼一人だと、軽く躱されるか上手いこと誤魔化されるから、だろ?」
「……」

赤井の妹の言葉に、否定は出来ないとチラリと雪乃と視線が合った。

「園子ちゃんは、私達に何を聞きたいの?」
「例えば、電撃結婚の理由、とか?」
「それもあるあるー」

それ、も?
質問と同時に赤井の妹の視線がこちらに向くが、初対面の時から友好的ではないのが変わることはない。
会った瞬間から、俺に対してだけは警戒心を解くことがない。
世良真純はJK探偵、安室透は私立探偵。
俺の本職を知らないなら、無理も無い話、か。

「僕の仕事上の都合で随分と待たせてしまっただけで、付き合い始めた頃から意識はしてましたよ」
「……」

どうしてそこで、バカ正直に応えるのかな?と、雪乃の視線と共に心の声が聞こえる。


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