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*名探偵コナン* Daylight *降谷 零*

第15章 *File.15*


『雪乃、お前は俺達の宝物だ。これから先、何があってもどんな時も笑ってろ。約束だからな』

観覧車にいた陣平からの最期の言葉は、彼とやり取りした全ての言葉は、萩と班長のと同じく、ずっと消せずにスマホに残ったまま。
あの日の約束は全然守れてない、ね。
今更だけど、陣平、ごめん。
未練がましいのは、わかってるの。
それでもやっぱり彼らとの、私だけの思い出は消せない。
私は弱い人間だから。
これがバレたら、

『いい加減に消せ』

と、陣平には呆れられそうだけど。

「やっと…」
「やっと?」
「みんなのことを話せるようになった、かな?」
「あの犯人を捕まえた時、松田君のことは忘れたらダメです。って、高木君に怒られたわ」
「私は……哀しみが深すぎたのよ。萩を喪った、あの日から」
「松田君と、伊達さんも……」
「うん。今でも彼らが生きてたら。って、ふとした瞬間に考えてた。でもやっと、少しずつ…」

遠くの空を見上げる。
それはきっと。
黒の組織との対決で大怪我をして、長い入院生活を強いられた、零と景光がようやく本来いるべき場所に戻って来てくれたから。
零と景光、どちらか一人でも喪っていたら、もう二度と私は立ち直れなかった。
ホントに、どれだけ二人に依存しているの?
刑事が聞いて、呆れちゃうわね。

「今は誰よりも傍にいてくれる、二人のお陰でしょ?」
「いいのやら、悪いのやら」
「いいのよ」
「なんで?」

そう、言い切れるの?

「安室さんと諸伏さんがいてくれたから、今の雪乃さんがいるんだから」
「……」
「人間、強さと我慢ばかりじゃ生きてられないわ」
「……そう、ね」

美和子もまた、幼い頃に刑事だったお父さんを亡くした。
チラリと隣を見つめたら、高い空を真っ直ぐに見上げる、強い意志を持つ眼差し。
お父さんに似て、貴女は強いのね、美和子。

「何でもかんでも一人で我慢するのは、雪乃さんの悪いトコ!」
「否定は出来ないな〜、この歳になると」
「自覚があるなら、何より!」
「頼りにしてるわよ、美和子」
「私の方が歳下なんだけど?」
「まあ、そう言わないでよ。姉御、なんでしょ?」


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