第14章 *File.14*
「んッ!」
人目を避けるために非常階段を下りて、警視庁の建物から出て直ぐに手を引くと、駐車場近くの木に背中を押し付け、感情を抑えることをせずに強引にキスをした。
「…っはぁ……ふっ………っん」
もういっそ、このまま抱いてしまいたいよ。
触れるだけの口付けから次第に深いものへと変えると、胸元を押して抵抗していた指先からは力が抜け、スーツを掴むのが精一杯になる。
「……れ、い?」
「理由を知りたいか?」
監視カメラの死角とはいえ、何故こんなリスクの高い場所でキスをしたのか?
「ん」
瞳を潤ませて乱れた呼吸を整えながら、小さく頷く。
「俺は生きている限り、お前に嫉妬をしないといけないようだよ」
「?」
「勘弁してくれないか、ゼロ」
「景光っ?!」
背後からの聞き間違えるはずがないその声に、雪乃から艶のある表情が一瞬にして消え去り、白い頬が真っ赤に染まった。
「逃がさないよ」
声を上げた雪乃を抱き締める腕に、更に力を込める。
「高明さんと景光は、自慢の兄だそうだ」
「「……」」
嫉妬の原因は、それ?
視線を合わせた双子の心の声が、確かに聞こえた。
「「今更言われても」」
「……」
またそうやって、阿吽の呼吸でハモる。
「此処は死角になるから、心配は要らないよ」
「だからって!」
困った顔で景光がそう言うが、人目が気になるのか雪乃は視線をキョロキョロさせて、腕の中から脱出しようと更にジタバタ暴れる。
勿論、離さない。
「見られてもいいだろ。俺達が夫婦なのは事実だ」
「だから、するなとは言わないが、場所が悪い。頼むから、職場では止めてくれ」
心底呆れたような、深いため息を洩らされた。
一体誰の所為だ、誰の!
「とにかく、二人とも無事でよかったよ」
「天下無敵だからね、ゼロは」
「!」
二人揃ってニコニコして見つめられると居心地が悪くて仕方ないのは、出逢った時から変わらない。俺にとって天下無敵なのは、キミ達双子の方だよ。
「さて、二人の無事も確認出来たし、オレは仕事に戻るよ」
「私も謝りに行かないと!」
「…一体何をやらかしたんだ?」
ギョッとした目をして、雪乃を見下ろす。