第14章 *File.14*
「顔だけのあんな優男と今すぐ離婚して、僕と結婚しよう。収入も安定してるし、僕の方が君を愛してるに決まってる」
「……」
簡単に離婚、離婚言うな!
零と私が今までどんな想いを抱えて、やっとこの日を迎えたと思ってんの!!
あー、これ以上考えたら怒りを堪え切れずに本気で泣くから、止める!
ってか、普通にキモイし、不味い。
あら?もう、後ろがないわ。
迫って来る男と距離を取るために下がると、背中が窓ガラスに触れた。
此処は三階。
此処から下に落ちるのだけは、いただけない。
さすがの私も、此処から無傷で飛び降りるのは無理です!
新婚早々に、入院沙汰は勘弁。
もう入院生活は懲り懲りです、はい。
最近、私が管内で一人になるのを狙うように後を付けて来ていたから、計画的に此処へ誘導した。ことさえ気付いてない、と。
現役刑事が、それでいいの?
「管内で拳銃所持の上に発砲。バレたら、大変な事になるのでは?」
「さて、それはどうかしらね?」
歩みを止めた男に、フフッと笑ってみせた。
「…まさか、拳銃の携帯許可を得てるとでも?」
貴方の所為でね?
「だとしたら、どうする?」
「!」
私は男を狙っていた銃口の向きを下方向へ定め直すと、躊躇うことなく引き金を弾いた。
パァンと乾いた音と共に銃弾が向かった先は、後からこの会議室に入って来たこの男によって内側から閉められた、スライド式の扉の鍵の部分。
発砲された銃弾は狙い通りに鍵に命中し、派手な音を立てて扉は見事に大破した。
想像以上でした。
「……」
ごめんなさい。
弁償します。
「望月警部の拳銃の携帯所持の許可は、受理されている」
破壊した扉の向こうから姿を現したのは、私のスマホに仕掛けた盗聴器から全容を聞いて、廊下で待機していた零だ。
隣には、風見もいる。
「お、お前はっ!」
「但し、許可を出したのは捜査一課ではなく、公安からだが」
「公安?!そもそも何故、部外者のこの男が此処にいるんだ!?」
「怪我は?」
「ないよ、大丈夫。ありがと」
動揺して零に気を取られているうちに、窓際から移動して逃げることが出来た。
零が半歩前へ出て後ろ手に私を庇ってくれ、更に私の半歩斜め後ろには、風見がいる。