第14章 *File.14*
「それ以上、私に近付いたら撃つわよ」
うん?
これって、どっかの刑事ドラマみたいなセリフじゃない?!
確かに私は現役の刑事だけどね、言ったそばから、こっ恥ずかしいわ!
「ずっと僕が影から見守っていたのを、君は気付いていたんだね」
見守っていた?
いやいやいやいや。
私が零と再会=恋人復活してから、あからさまに怪しかったんですけど?
そもそもが貴方の行動に対し、恐怖ならまだしも、好意を感じたことはなんか一度もないわ!
管内にいる時は、まだ周りの目があるから視線を感じるぐらいですんでたけど、入籍してからはストーカーだったじゃん!
何度か帰り道に尾行されたものだから、家がバレないように遠回りしたり零のセーフハウスを借りたり、ホテルに泊まったり。
今直ぐホテル代を返せ!
ストーカーまでになると、さすがに私も怖くなって、零に相談したのよ。新婚早々に手間や迷惑なんて、かけさせたくはなかったのに!
「貴方は私にどうして欲しいわけ?」
「安室透とか言うあの男と今すぐに離婚して、僕と結婚して欲しい」
「………はい?」
声を出せるまで、たっぷり五秒はかかりましたけど?
過去に私が逮捕した犯人絡みの恨み辛みじゃなくて、まさかのそっち?
零、どうしよう?
管内の小会議室の窓際に立って拳銃を構えながら、思わず力が抜けそうになったのは言うまでもない。
「僕が此処に配属されてまもない頃、捜査中の路地裏で君に助けられたんだ。それが忘れられなくて、傍で見ているうちに君を好きになった」
「……」
違う意味で怖い!
目が据わって来たし、これはヤバいヤツだわ。ってか、コイツとの記憶は、薄らーっとしかないんだけど?
この男が捜査三課の西村と言うことは、私も調べさせてもらったから知ってる。
31歳、独身のノンキャリア組。捜査三課ではまずまず腕が立つ方。
性格はわりと大人しめ。顔は決して悪くはない。が、私の好みのタイプでは、ない。
「君のことを調べたら、恋人はいないって言うから安心してたのに、ついこないだ、恋人が出来たって聞いた途端に結婚しただって?それも相手はいい歳して、喫茶店のウエイター兼私立探偵?君は騙されてるんだ!」
「……」
いえ、間違いなく、騙されているのは貴方の方です。
私のことも、一体何処まで調べたんだか?