第13章 *File.13*
「でも意外よねー」
「何が?」
園子の言葉に、蘭が首を傾げる。
「あの安室さんが、指輪をしてるってことがよ」
「それは言えてる。仕事の妨げになるって、指輪なんかしなさそうに見えるよな」
「園子と世良さんは、安室さんと雪乃さんが一緒にいるところを見たことがないから、そう思うだけよ」
蘭がクスッと可愛く笑った。
「えっ?そんなに?」
「付き合い長えしな」
「お互いがとても大切だって、二人を見てたら凄く伝わって来るよ」
「「へえ」」
園子と世良は、頭の中で二人の顔を並べているみたいだが、どうやら蘭の話だけではしっくりこねえらしい。
「是非見てみたいモンだな」
「私もー」
「普段の二人からは想像つかないから、園子も世良さんもきっとびっくりするよ。ねえ、新一?」
「まあな」
まるで三年近くもの空白なんかなかったみたいに。
いや、その空白の時間があったからこその、再会してからのスピード婚。
事情を知らねえ周りの人間からしたら、そりゃ驚くよな。
「ってか、結婚以前に、あの安室さんに彼女がいたことに驚いたよ、ボクは」
「……」
まあな。
二人が二人とも恋人はいねえって普通に言ってたし、雪乃さんと出会った時は、安室さんと諸伏さんとは幼馴染で警察学校の同期ってことしか聞いてなかった。
「でしょう?あの容姿でJKからはもちろん、老若男女に優しくて、料理は上手で推理力もピカイチで何でも出来て。だけど、不思議とずっと特定の女性の影は全く無かったもの!」
「だよねー」
園子が梓さんの言葉に同意を示す。
「そう言われてみれば、確かにそうかも」
「……」
さすがはゼロ、ってことか?
雪乃さんもああ見えて、とても優秀な刑事だ。
あの兄達にして、あの妹あり。
この先、何があっても、あの四人だけは絶対に敵に回したくねえな。
楽しげに話に弾む蘭達を見ながら、小さなため息を付いた。