第13章 *File.13*
「安室さんと…」
「雪乃さんが…」
「「「けっ、結婚っ?!」」」
「私もすっごく驚いたのよ!安室さんったら、私が指輪に気付くまで知らん顔なのよ!酷いでしょっ?」
「でも、その本人達はやっぱりいないのね、今日も」
「残念ながら、安室さんは今日はお休みでーす」
そう言いながら、梓さんはカウンターの奥へと戻る。
「何で、また急に?」
「急に、じゃねえって。あの二人に限って、ンなことあるわけねえだろ」
入籍したのは、11月7日。
降谷さんと雪乃さん、そして諸伏さんの親友二人が亡くなった、とても大切な日だ。
「もしかして、新一は知ってたのっ?」
「まあ、な」
当日に連名で、LINE来たしよ。
「どうして黙ってたのよ!新一君!」
「祝い事とは言え、園子が俺の立場だったら、二人のことを周りのヤツに言い触らすのかよ?」
「ぐっ」
バッサリと言い返せば、園子が黙り込んだ。
「そういや幾つだっけ?あの二人」
「確か二人共、30のはず」
「「「えっ?!」」」
蘭と園子、世良が顔を見合わせた。
「うそっ?!」
「全っ然、見えないっ!」
「マジで?」
「ウソ言って、どうすんだよ」
「み、見えないーっ!」
「まー、美男美女で、二人揃って童顔だしな」
「若さの秘訣は何っ?」
「現役JKのオメーが言うなって」
「私達の一回り上…」
「うーん」
「……」
そういや、雪乃さんの双子の兄の諸伏さんも童顔。ってことは、高明さんも髭を剃ったら…。
きっと童顔、なんだろうな。
三人の顔を頭の中で並べてみるが、やっぱ、
「似てねーよな」
兄二人と、雪乃さんが、だ。
「何が?」
「いや、こっちの話」
本人達からの申告がなかったら絶対に兄妹って気づかねえし、考えもつかねえって!
「じゃあ、結婚式とか…」
「するんじゃねえの?」
来年の春に、って言ってたからな。
「雪乃さんのドレス姿、綺麗でしょうね」
「スタイルいいしな~、雪乃さん」
「ボク達にも、写真ぐらいは見せてもらえるんじゃないか?」
「だな」
世良の言葉に頷く。
ごく普通の家庭みたいに、盛大には出来ない。
降谷さんの立場を考えれば。