第13章 *File.13*
『お祝いごとだけど、こういうことは一回ですませたいでしょう?』
と、私の第二の母は、零の顔を見上げて意味深に笑った。
『お心遣い、有難うございます』
零はびっくりした表情を直ぐに元に戻すと、スッと頭を下げて礼を述べた。
私達は幼馴染だから、零とおじさん達とは初対面ではなかったけど、
『最後に会ったのは、何時だっけ?』
から、始まった再会。
零は高兄に会ったあの時よりも、更に完璧な好青年を演じていたけど、
『さすがに緊張したよ』
挨拶が終わった後、車の中でネクタイを緩めながら、深い息を吐いていたっけ。
「雪乃さん」
「うん?」
「結婚おめでとう!」
「ありがと」
「って、雪乃さんっ?!」
「まだ仕事は当分辞めないから、よろしく!」
美和子を抱き締めた腕をそのままに言葉を続ければ、
「ダーメ!もし雪乃さんが仕事を辞めても、私は雪乃さんの友人を一生辞めるつもりなんかないわよ!」
と、お茶目にウインクされた。
「ふふ。それは頼もしいわね、期待しとく」
「任せといて!」
腕を放せば、美和子の満面の笑顔があって、
「高木は幸せ者ね〜」
思わず、そう呟いてしまった。
「高木君がどうかした?」
「高木はこんな美和子に惚れたんだろうなーって」
「なっ、何言ってるの!」
「ふふっ」
周りの人間さえも、純粋に幸せに出来る二人だ。
美和子と高木には、ずっとこのまま関係でいて欲しいものだわ。
頬を赤く染めた美和子と管内に戻りながら、私はそんな呑気なことを考えていた。