第12章 七変化
ただでさえ距離のあった夕顔と瑞。
と言っても、夕顔が一方的に壁を作っていたのだが、二人の関係はあの一件から更にぎこちなくなっていた。
話すことはおろか、挨拶すらなくなり、
「は〜……」
瑞はガックリと肩を落とした。
そこに昼顔が通りがかった。
「すみません瑞さん……夕顔兄さんの事ですよね」
「あっ、昼顔さん……!」
「瑞さんには兄弟共々お世話になっているのに、本当にすみません。勝手に女性だと勘違いされて、好きになられて、告白されて、拗ねられて」
つらつらと吐き出される言葉に瑞は固まる。
昼顔はにっこりと微笑み、瑞に顔を傾けた。
「完全にとばっちりですよね」
「いえいえいえッ! そんな!」
「僕から夕顔兄さんに言っておきましょうか。子供みたいに不貞腐れるのはやめろ、いい加減迷惑だって」
ニコニコと微笑んだままの昼顔の口から淡々と紡がれる言葉に、瑞は顔を引き攣らせる。
「いやっ! 本当に大丈夫ですから昼顔さん!」
「そうですか?」
笑顔を保ったままの昼顔に、高速で頷く。
「じじ、自分で何とかしますよ、私が事の発端なので……」
「そうですか。まあ、困った時は僕に言ってくださいね」
瑞はキレた夕顔と怒った昼顔のどちらが怖いだろうか、と考えながら首を縦に振った。