第42章 大団円へと
その後、月日は流れ。
大きな改革が起こり、遊女や陰間遊びなどの贅沢は悪とされ、そんな時代の流れに飲み込まれるように、あれほど栄えていた陰間茶屋も衰退の一途を辿っていった。
一つ減り、また一つ減り。
そして、影の花もいつしか憂き目に逢い、その姿を消したとされている。
しかし、陰間たちは不幸ではなかった。
彼らの幸せは陰間としてあることではなく、ある男と共に生きる事だった。
陰間としての彼らはいなくなっても、決して彼らがこの世界から消える訳ではない。
名前以外何も知らない、家族も家も覚えていない、そんな冗談のような店主がいたこと。
それだけできっと、彼らの人生は明るく照らされているだろう。
これからも、ずっと。
「そう言えば……瑞さんって実は、記憶が戻っているんじゃないかって思う時があるんだが」
「じゃあ、本当は何もかも思い出しているのにここにいるってこと?」
「……これは僕の憶測だがな」
これはとある日の睡蓮と椿という陰間のやり取り。
本当のことは誰も知らない。