第12章 七変化
「それで……、あの、今日は一体何を……」
瑞の目の前の桜は、大きなつづらの蓋を開き、中に大量に詰まった振袖を取り出す。
「どれがいいかな〜」
鼻歌交じりに振袖を持っては、楽しげに吟味している。
「これかこれかなあ。白か、桜色〜?」
次に衣桁に掛けられた羽織を手に取ると、人差し指を唇に当てた。
「んー、羽織は何色が似合うかなあ……」
「あのっ! まさかそれ、私に着せようとしてませんか!?」
「うん、そうだけど」
「なぜ!」
「似合うから」
桜はサラッと受け流し、箪笥を開く。
「せっかくだから髪も変えちゃお」
中から女物のかつらを取り出した。
「髪飾りは〜、花簪と、笄と、櫛と……」
続いて髪飾りを準備する。
「あの……桜さん……」
桜は化粧道具箱を引き寄せ、真剣な表情で瑞の顔を見つめる。
「……あの……」
「ちょっと黙ってて」
「はい」
瑞に真っ白な振袖と、桜色の羽織を着せる。
髪は櫛で丁寧に梳き、黒髪の髷かつらで覆う。
頭頂部には前櫛、後頭部には笄を着け、脇には花簪を刺して彩っていく。
肌に丁寧に白粉を塗り、化粧水を施す。
唇と目尻に紅を刺し、眉を整え、
「かーわーいーい〜!」
桜は黄色い声を上げた。