第12章 七変化
今日も今日とて、陰間の仕事を終えた桜。
金色の髪を靡かせ、真っ直ぐに前を向き、肩で風を切って歩く。
華やかな深紅の振袖に豪華な簪と、艶やかに着飾った桜の美しさは街中の目を引くものだった。
桜は影の花の前で足を止め、
「ただいま〜」
玄関を開いた。
「桜さん。おかえりなさい」
桜の声に気がついた瑞が駆け寄り、にこりと微笑みかける。
「……んも〜……」
すると、桜は美しくすました顔から、頬をぷくっと膨らませた。
「ど、どうされましたか」
面食らう瑞に桜が詰め寄る。
「瑞ったら、ボクを蔑ろにして! 最近瑞と全然喋れてないっ」
「そんなつもりは……ただ桜さんはお忙しいので、なかなか時間が合わず」
「言い訳はいいの! 明日はボクに付き合ってっ! 他の子との約束入れるの禁止!」
「はい」
瑞がコクコクと首を縦に振れば、桜はとりあえず納得した顔で縁取り草履を脱ぐ。
「お風呂入りた〜い」
桜は両腕を伸ばして伸びをしながら、スタスタと歩いて行く。
瑞は桜を見送り、胸をなで下ろした。
その後に続いて玄関の戸を開いた萩。
下駄を脱ぎながら、薄く笑った。
「まるで夫婦だな、お前ら。やきもち焼きな嫁と気弱な旦那のやり取りって感じだったぞ」
「やっ、そんな!」
瑞は顔を赤くして首を振り、
「……どっちも男ですよ!」
ツッコミを入れた。